退職代行サービスは、言い出しにくい退職の意思を代わりに伝えてくれる便利なサービスとして、近年急速に利用者を増やしています。パーソル総合研究所の2025年の調査によると、離職者の約20人に1人が退職代行を利用しているというデータもあり、特に20代〜30代の若年層を中心に広く浸透しています。
しかし、利用者が急増する一方で、「退職代行を使って後悔した」「思わぬトラブルに巻き込まれた」という失敗事例も少なくありません。中には、2025年10月に起きた大手退職代行業者への警視庁による家宅捜索(弁護士法違反容疑)のような、業界全体を揺るがす事件も発生しています。
本記事では、退職代行サービスに潜む”落とし穴”と、実際に起きた失敗事例を徹底解説します。これから退職代行の利用を検討している方が、後悔せずにスムーズな退職を実現するための正しい選び方と使い方もお伝えします。
この記事でわかること
- 退職代行サービスとは?なぜ利用者が増えているのか
- 【実例】退職代行の恐ろしい”落とし穴”と失敗事例5選
- 退職代行で後悔しないための「正しい業者の選び方」
- 利用前に確認!退職代行を成功させるための準備リスト
- 退職代行利用者の「リアルな声」(後悔と成功体験)
- まとめ:退職代行は「逃げ」ではなく「自分を守る手段」
1. 退職代行サービスとは?なぜ利用者が増えているのか
退職代行サービスとは、労働者に代わって会社へ「退職の意思」を伝えるサービスのことです。
本来、民法第627条により、期間の定めのない雇用契約(正社員など)の場合、労働者は退職の申し出から2週間で退職できる自由が保障されています。しかし、実際には以下のような理由から、自力での退職が困難なケースが多発しています。
- 強引な引き止め:「今辞められたら困る」「損害賠償を請求する」と脅される。
- ハラスメント:上司からのパワハラや嫌がらせが酷く、直接話すことすら精神的に限界。
- 人手不足:常にギリギリの人員で回しており、辞めると言い出せない雰囲気がある。
退職代行は、こうした過酷な労働環境から労働者を守り、第三者が介入することで物理的・心理的な負担を大幅に軽減できるため、現代の労働市場において必要不可欠なサービスとなりつつあります。
パーソル総合研究所が2025年12月に発表した「離職の変化と退職代行に関する定量調査」によれば、退職代行の利用者は一般離職者よりも年齢層が若く、20〜30代が中心。在職1年未満での利用も多いことが明らかになっています。また、東京商工リサーチの調査(2025年6月)では、大企業の15.7%が「退職代行を利用した従業員の退職があった」と回答しており、もはや退職代行は一部の人だけが使う特殊なサービスではなくなっています。
2. 【実例】退職代行の恐ろしい”落とし穴”と失敗事例5選
退職代行は便利な反面、業者選びや利用方法を間違えると、かえって状況を悪化させるリスクがあります。ここでは、実際に報告されているトラブル事例を5つのパターンに分けて紹介します。

落とし穴① 非弁行為(違法行為)により退職交渉がストップした
最も深刻かつ頻発しているのが、「非弁行為(ひべんこうい)」に関するトラブルです。
弁護士資格を持たない民間業者が、報酬を得て法的な交渉(有給消化の交渉、未払い残業代の請求、退職日の調整など)を行うことは、弁護士法第72条で禁じられています。民間業者ができるのは、あくまで「退職の意思を伝達する(使者としての役割)」だけです。
【実際の失敗事例】
民間の退職代行業者に依頼し、会社に有給消化を求めたところ、会社側から「弁護士資格のない業者とは一切交渉しない」と突っぱねられた。業者はそれ以上何もできず、結局自分で会社と直接やり取りする羽目になり、退職手続きが完全にストップしてしまった。
さらに、2025年10月22日には、累計4万件以上の実績を謳う大手退職代行サービス「モームリ」の運営会社(株式会社アルバトロス)に対し、警視庁が弁護士法違反(非弁行為)の疑いで家宅捜索に入るという衝撃的な事件が発生しました。利用者に弁護士を紹介して紹介料を得ていた疑惑などが持たれており、業者選びの重要性が改めて浮き彫りになっています(出典:朝日新聞、時事通信 2025年10月22日)。
⚠️ ポイント:「顧問弁護士監修」という表記は、弁護士が直接対応しているわけではありません。交渉が必要な場合は、必ず「労働組合」または「弁護士」が直接対応する業者を選びましょう。
落とし穴② 会社から本人や実家に直接連絡が来てしまった
退職代行業者は会社に対し「本人や家族には直接連絡しないよう」伝えますが、これには法的な強制力はありません。
【実際の失敗事例】
退職代行を実行した当日の夜、怒り狂った上司から個人のスマホに鬼のように着信があった。さらに実家にも電話がいき、「お宅の息子さんが急に来なくなった。どういう教育をしているんだ」と親にまで迷惑をかけてしまい、親バレを防ぐどころか大トラブルに発展した。
コンプライアンス意識の低いブラック企業の場合、業者の警告を無視して強行突破してくることがあります。このようなリスクが高い会社の場合は、労働組合や弁護士に依頼することで、より強力な対応が期待できます。
落とし穴③ 悪徳業者に騙され、お金だけ取られて逃げられた
退職代行の需要増に目をつけ、詐欺まがいの悪徳業者も横行しています。
【実際の失敗事例】
「期間限定キャンペーンで1万円!」という格安の広告を見て、LINEで相談後に指定口座へ振り込んだ。しかし、振り込んだ途端に連絡が途絶え、会社には何も伝わっていなかった。結局、お金だけ騙し取られて無断欠勤扱いになってしまった。
相場(2万〜3万円程度)から極端に安すぎる業者や、実績・会社概要が不透明な業者には注意が必要です。マイナビニュース退職代行ガイドの調査によれば、「キャンペーンや先着何名限定などと言ってすぐにお金を振り込ませようとする業者」は悪質業者の典型的な手口とされています。
落とし穴④ 有給休暇の消化を拒否され、泣き寝入りした
労働基準法第39条により、有給休暇の取得は労働者の権利です。しかし、退職代行を使われたことに対する腹いせとして、会社が有給消化を認めないケースがあります。
【実際の失敗事例】
1ヶ月分の有給が残っていたので消化して辞めるつもりだったが、会社から「急に辞めるのだから有給は認めない。欠勤扱いにする」と言われた。依頼したのが民間業者だったため交渉ができず、結果的に数十万円分の給与を損してしまった。
有給消化の交渉は、民間業者では対応不可(非弁行為)です。有給が残っている場合は、必ず労働組合か弁護士に依頼してください。
落とし穴⑤ 「懲戒解雇」扱いにされ、転職活動に悪影響が出た
退職代行を使ったことへの報復として、会社が不当に「懲戒解雇」扱いにしようとするブラック企業も存在します。
【実際の失敗事例】
退職代行を使って辞めた後、離職票や退職証明書を確認すると「懲戒解雇」と記載されていた。本来、自主退職が懲戒解雇になることはあり得ないが、会社が勝手に処理した模様。転職先に提出する書類だったため、次の就職活動に大きな悪影響が出てしまった。
退職代行を利用したことだけを理由に懲戒解雇とすることは法的に無効です。しかし、このような不当な扱いに対して反論・交渉できるのは、法的な知識を持った専門家(弁護士や労働組合)だけです。
3. 退職代行で後悔しないための「正しい業者の選び方」
退職代行サービスで失敗しないための最大のポイントは、「自分の状況に合った運営元(業者)を選ぶこと」です。退職代行業者は、運営母体によって大きく3つに分類され、対応できる業務範囲が明確に異なります。

運営母体による対応範囲の違い
| 運営母体 | 費用相場 | 退職の伝達 | 有給消化・退職日の交渉 | 未払い給与・残業代の請求 | 損害賠償・裁判への対応 |
|---|---|---|---|---|---|
| 民間企業 | 1万〜2万円 | ◯ | × 非弁行為 | × 非弁行為 | × 非弁行為 |
| 労働組合 | 2.5万〜3万円 | ◯ | ◯ 団体交渉権 | △ 一部可能 | × |
| 弁護士 | 5万〜7万円 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
状況別:あなたにおすすめの依頼先
✅ 労働組合運営の退職代行がおすすめな人
- 有給を確実に消化して辞めたい
- 会社と少し揉める可能性があるが、裁判沙汰にはならないと思う
- 費用は抑えつつ、安心感も欲しい
労働組合には「団体交渉権」が法律で認められているため、会社に対して有給消化や退職日の調整を合法的に交渉できます。コスパと安心感のバランスが最も良く、一般的な退職であれば労働組合運営のサービスが最適です。
✅ 弁護士事務所の退職代行がおすすめな人
- 未払い残業代や退職金を確実に請求したい
- パワハラ・セクハラの慰謝料を請求したい
- 会社から「損害賠償を請求する」と脅されている
- 公務員である(※公務員は法律が異なるため弁護士必須)
金銭的なトラブルや法的な争いが予想される場合は、必ず弁護士に依頼してください。費用は高くなりますが、代理人としてすべての法的手続きを任せることができます。
✅ 民間企業の退職代行がおすすめな人
- 会社と一切揉める要素がなく、ただ代わりに伝えてほしいだけ
- 有給消化などの希望は一切ない
- とにかく1円でも安く済ませたい
入社直後で有給がなく、会社側もすんなり退職を認めてくれるような極めてシンプルなケースであれば、民間業者でも問題ありません。ただし、少しでも会社が反発してきた瞬間に対応できなくなるリスクは覚悟しておく必要があります。
4. 利用前に確認!退職代行を成功させるための準備リスト
退職代行を依頼する前に、以下の準備をしておくことで、トラブルのリスクをさらに減らすことができます。

- 会社からの貸与品(PC、社員証、保険証など)を整理しておく
退職代行実行後に出社しなくて済むよう、最終出勤日に会社に置いてくるか、後日スムーズに郵送できるようにまとめておきましょう。 - 私物を持ち帰っておく
会社に置いている私物は、退職代行を利用する前に少しずつ持ち帰っておくのが鉄則です。 - 業務の引き継ぎメモを作成しておく(任意)
「引き継ぎをしていない」という理由で会社から文句を言われるのを防ぐため、簡単な引き継ぎ資料をPCのデスクトップに残しておくなどすると、より円満に退職しやすくなります。 - 有給の残日数を把握しておく
有給消化の交渉を依頼する場合、正確な残日数を把握しておくとスムーズです。 - 業者選びは口コミ・実績・返金保証を必ず確認する
信頼できる業者かどうかは、公式サイトの会社概要・運営実績・返金保証の有無・口コミサイトの評判を複数チェックして判断しましょう。
5. 退職代行利用者の「リアルな声」(後悔と成功体験)
実際に退職代行を利用した人たちの声を見てみましょう。
後悔した人の声
「民間業者に依頼したら、会社から『本人から直接言われないと認めない』と拒否され、業者は何もしてくれなかった。結局、労働組合系の業者に依頼し直すことになり、お金が二重にかかってしまった。」
(20代・営業職)
「退職代行を使って辞めたことに対する罪悪感が拭えず、しばらく自己嫌悪に陥った。ただ、あのままあの会社にいたらメンタルが崩壊していたと思うので、結果的には良かったと言い聞かせている。」
(30代・事務職)
「費用の安さだけで選んだら、担当者の対応が非常に雑で、会社への連絡内容も自分の意図と全く違う形で伝わっていた。安物買いの銭失いとはまさにこのこと。」
(20代・飲食業)
利用して良かった人の声
「毎朝、仕事に行く前に吐き気がするほど追い詰められていました。労働組合の退職代行に依頼したところ、即日出社しなくてよくなり、有給もすべて消化できました。上司と顔を合わせずに辞められたことで、本当に救われました。」
(20代・エンジニア)
「パワハラ上司に辞めると言えず悩んでいましたが、弁護士の退職代行に依頼。未払いだった残業代もしっかり回収してくれて、退職代行の費用以上の金額が手元に残りました。プロに任せて正解でした。」
(30代・介護職)
「退職代行を使ったことで、自分がどれだけひどい環境にいたのか客観的に分かりました。自分だけだったら、絶対に負けていたと思います。」
(20代・製造業)
6. まとめ:退職代行は「逃げ」ではなく「自分を守る手段」
退職代行サービスを利用することに対して、「自分で言えないなんて甘えだ」「無責任だ」といった批判的な声があるのも事実です。しかし、過酷な労働環境やパワハラによって心身を壊してしまっては元も子もありません。
退職代行は決して「逃げ」ではなく、自分の心と体を守り、次のステップへ進むための正当な手段です。
ただし、本記事で解説したように、業者選びを間違えると「非弁行為」などの思わぬトラブルに巻き込まれ、後悔することになります。
業者選びの鉄則
- 有給消化や交渉が必要なら「労働組合」
- 金銭トラブルや法的対応が必要なら「弁護士」
- ただ退職の意思を伝えるだけなら「民間業者」も可(ただしリスクあり)
この鉄則を守り、信頼できる業者を選ぶことで、安全かつ確実に退職を実現しましょう。今の職場が辛くて限界を感じているなら、まずは無料相談を行っている退職代行サービスに連絡してみてはいかがでしょうか。
参考資料
・パーソル総合研究所「離職の変化と退職代行に関する定量調査」(2025年12月)
・東京商工リサーチ「退職代行による退職、大企業の15.7%が経験」(2025年6月)
・マイナビニュース退職代行ガイド「退職代行のトラブル・失敗例を紹介」(2026年1月)
・PRESIDENT Online「退職代行モームリに警視庁が動いた…」(2025年11月)
・朝日新聞「警視庁が退職代行モームリを捜査 弁護士法違反容疑」(2025年10月)
・東京弁護士会「退職代行サービスと弁護士法違反に関する注意喚起」(2025年10月)


