※本記事にはプロモーションが含まれます
「退職代行を使うなんて非常識」「無責任な若者が増えた」——退職代行について、こうした語られ方をよく見かけます。ですが、実際のデータはまったく違う姿を示しています。
結論からお伝えします。退職代行の利用者は、一般の離職者よりもチームワーク志向が強く、前職に申し訳なさを感じている人が多い——これは筆者の主観ではなく、大手シンクタンクの調査で示された結果です。
人材業界で働く現役のプロ(退職・転職相談500名超)が、パーソル総合研究所が2025年12月に発表した「離職の変化と退職代行に関する定量調査」をもとに、退職代行のリアルな実態を読み解きます。
退職代行を使う人の割合は5.1%|離職者の20人に1人
まず気になる割合です。同調査によると、正社員の離職者のうち退職代行を利用した人は5.1%。約20人に1人という水準です。
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 退職代行の利用率 | 正社員離職者の5.1%(約20人に1人) |
| 利用者の年齢層 | 20〜30代が約5割 |
| 前職の在籍期間 | 「1年未満」が約4割(一般離職者の約2倍) |
| 利用したサービスの運営主体 | 民間企業が約4割、労働組合が約3割 |
「20人に1人」は、もはや特殊な選択ではありません。特に入社1年未満での利用が一般離職者の約2倍という点が目を引きます。早い段階でミスマッチや人間関係の問題に直面した人ほど代行に頼りやすい、と読み取れる結果です。
実態①:利用者はチームワーク志向が強く「申し訳なさ」を感じている
※以下で紹介する利用者の傾向は、本調査の退職代行利用者52名の回答にもとづくものです。少人数の調査結果のため、確定的な数値ではなく傾向としてお読みください。
ここが最も通説を覆す結果です。調査によると、退職代行の利用者は一般の離職者と比べて次の傾向がありました。
- 「周りの人たちと密に力を合わせて働きたい」という志向が強い
- 前職の関係者に対して「申し訳なさ」を感じている
- 自分を「裏切りもの」だと感じている
調査報告書には、次のように明記されています。
一般に指摘されがちな身勝手さや無責任さは、利用者の特質としては全くあてはまらない
出典:パーソル総合研究所「離職の変化と退職代行に関する定量調査」(2025年12月2日発表)
なお、正確には調査が示したのは「周りの人たちと密に力を合わせて働きたい」という志向の強さです。つまり性格診断の結果ではなく、働き方の希望としてチームワークを重視する層が多かった、ということになります。
この結果は、相談現場の実感とも重なります。代行を検討する方の多くは「迷惑をかけたくない」「申し訳ない」と繰り返し口にします。無責任だから使うのではなく、責任を感じすぎて自分では言い出せないから使う——これが筆者の見立てです。
「自分は非常識なのではないか」と迷っている段階なら、その感覚自体が、あなたが無責任ではないことの証明です。あとは自分の状況に合った方法を選ぶだけです。
実態②:不満の1位は「直属上司との関係」で約7割
では、協調的な人がなぜ代行を使うことになるのか。理由は職場環境にありました。
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 前職への不満の1位 | 直属上司との関係(約7割)※一般離職者との差が最も大きい項目 |
| 上司からのハラスメント経験 | 約4割 |
| 職場での孤立 | 一般離職者・就業継続者と比べて最も孤立度が高い |
さらに調査は、利用者が同僚・家族・友人に相談相手がいない傾向を指摘しています。「協調的に働きたいのに職場で孤立し、相談できる人もいない」というギャップが、代行という選択の背景にあると読み取れます。
なお、離職していない正規雇用者全体でも61.4%が「職場で相談できる人がいない」と回答しています。これは退職代行利用者だけの問題ではありません。ハラスメントの相談先については相談窓口まとめの記事で解説しています。
実態③:利用後のトラブルは約5割が「なかった」
「退職代行を使うとトラブルになるのでは」という不安についても、データがあります。
調査では、退職代行の利用後に生じたトラブルは「なかった」が約5割で最多でした。一方、トラブルの中で最も多かったのは金銭に関するトラブルです。
ここは実務的に重要な示唆です。金銭(未払い賃金・有給・退職金など)が絡む場合、交渉権のない民間サービスでは対応できません。交渉が適法にできるのは弁護士と労働組合だけです。この違いは退職代行は違法?の記事で詳しく解説しています。
実態④:離職理由は「長時間労働」から「成果圧力」へ
この調査でもうひとつ興味深いのが、離職理由そのものの変化です。2019年の調査と比較すると、次のようにシフトしていました。
| 上昇した不満 | 減少した不満 |
|---|---|
| ・上司の指示や考えに納得できない ・求められる成果が重すぎる ・受けている評価に納得できない |
・サービス残業が多い ・労働時間が長い |
働き方改革によって労働時間の問題は実際に改善が進んでいます(調査でも月40時間以上の残業者は半減)。その一方で、「成果へのプレッシャー」と「評価への納得感のなさ」が新しい離職理由として浮上しているのが今の構図です。
「残業は減ったのに、なぜかしんどい」という感覚には、こうした背景があります。残業時間そのもののルールは残業の上限規制の記事で確認できます。
データから見えた3つの示唆
- ①退職代行は「非常識な人の選択」ではない——離職者の20人に1人が使い、利用者はむしろチームワークを重視する傾向
- ②背景は「相談相手がいないこと」——上司との関係悪化+孤立。正規雇用者全体でも6割が職場に相談相手を持たない
- ③金銭が絡むなら形態選びが重要——トラブルの最多は金銭。交渉が必要なら弁護士・労働組合の運営を選ぶ
よくある質問
Q1. 退職代行を使う人はやはり増えているのですか?
この調査では正社員離職者の5.1%が利用と報告されています。特に20〜30代・在籍1年未満での利用が目立ちます。なお本調査の退職代行利用者のサンプル数は52名であり、傾向として捉えるのが適切です。
Q2. 退職代行を使うと転職で不利になりますか?
退職代行を使ったかどうかは、離職票や退職証明書に記載される項目ではなく、選考書類から判別されることはありません。前職に在籍していた事実は記録に残りますが、辞め方までは書類に現れないということです。
Q3. 上司との関係が理由でも、代行を使っていいのでしょうか?
データが示すとおり、利用者の不満の1位は「直属上司との関係」で約7割、ハラスメント経験も約4割です。当事者に退職を切り出すこと自体が困難な状況は珍しくありません。心身を守ることを優先して問題ありません。
まとめ:「無責任だから使う」のではなく「責任を感じすぎて言えない」
- 退職代行の利用は離職者の5.1%(20人に1人)。20〜30代・在籍1年未満が中心
- 利用者はチームワーク志向が強く、申し訳なさを感じている。「身勝手」「無責任」は当てはまらないと調査は明言
- 背景は上司との関係悪化(約7割)とハラスメント(約4割)、そして孤立
- 利用後は約5割がトラブルなし。多いのは金銭トラブルで、交渉には弁護士・労働組合が必要
- 離職理由は長時間労働から成果圧力へシフト
もしあなたが「代行を使うなんて情けない」と自分を責めているなら、このデータを思い出してください。退職した人の20人に1人が同じ選択をしていて、その多くはあなたと同じように「申し訳ない」と感じながら決断しています。
出所:パーソル総合研究所「離職の変化と退職代行に関する定量調査」(2025年12月2日発表・調査期間2025年8月21日〜9月1日・調査全体1,829名/うち退職代行利用者52名)
サービス選びで迷っている方へ
データが示すとおり、トラブルで最も多いのは金銭に関するものです。有給や未払い分の交渉が必要かどうかで、選ぶべき運営形態(弁護士・労働組合・民間)は変わります。
運営形態ごとの違いは退職代行は違法?の記事でも解説しています。

