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「今年の途中で会社を辞めたけど、年末調整はどうなるの?」「無職のまま年を越しそう。何もしなくていい?」
秋から年末にかけて、退職した人からよく届く質問です。
人材業界で働く現役のプロ(退職・転職相談500名超)の筆者が、国税庁の案内をもとに、年内に退職した人の年末調整を「転職した・していない・12月まで在籍」のケース別に整理しました。制度の内容は2026年10月時点の情報です。
結論|年末調整は退職者もできる。ただし「年末にどこで働いているか」でやり方が変わる
年内に退職した人の年末調整は、この3パターン
・年内に転職した人:新しい会社で年末調整。前の会社の源泉徴収票を提出する
・年内に再就職しない人(無職のまま年を越す人):原則として年末調整はない。自分で確定申告をすると、払いすぎた税金が戻ることが多い(12月に支払われる給料を受け取ってから辞めた人など、一部は辞めた会社で年末調整される)
・12月31日まで在籍している人(有給消化中を含む):今の会社で年末調整される
年末調整は「会社が1年分の所得税を精算する手続き」です。会社を辞めると、その精算をしてくれる人がいなくなるため、次の会社に任せるか、自分で確定申告をするかのどちらかになります。何もしないと、戻るはずの税金を受け取れないことがあります。
そもそも年末調整とは?退職すると何が困るのか
会社員の所得税は、毎月の給料からおおよその金額が天引き(源泉徴収)されています。年末調整は、12月に1年間の給料が確定した時点で、生命保険料などの控除も反映して本当の税額を計算し、払いすぎや不足を精算する手続きです。
毎月の天引きは、1年を通して働く前提で計算されています。そのため年の途中で辞めて収入が少なくなった人は、税金を多めに払った状態になっていることが多いのです。精算をしないままだと、その分は戻ってきません。自分で精算して払いすぎた税金を返してもらう手続きを「還付申告」といいます。
【ケース別】年内に退職した人の年末調整の扱い
| あなたの状況 | 年末調整はどこで? | あなたがやること |
|---|---|---|
| 年内に転職し、12月中に新しい会社から給料が支払われる | 新しい会社 | 前の会社の源泉徴収票を提出する |
| 年内に再就職しない(無職・失業保険の受給中) | なし | 翌年に自分で確定申告(還付申告) |
| 12月31日まで在籍(有給消化中など) | 今の会社 | 会社から配られる申告書を出す |
| 12月に支払われる給料(支給日が12月のもの)を受け取ってから退職 | 辞めた会社(退職時) | 会社に年末調整をしてもらえるか確認 |
| パートなどで、その年の給与が一定額以下・年内に再就職しない | 辞めた会社(退職時) | 会社に確認。対象外なら確定申告 |
年の途中で退職した人に会社が年末調整をするケースは、国税庁のタックスアンサー「No.2665 年末調整の対象となる人」で決まっています。主なものは、12月に支払われる給料を受け取った後に退職した人と、パートなどで年内の給与総額が一定額以下かつ年内に再就職の見込みがない人です。
パートの基準額は、同じページで「136万円以下」と案内されています(2026年4月1日現在の法令による)。自分が当てはまるかは勤務先に確認してください。多くの退職者は、辞めた会社では年末調整されないと考えておきましょう。
年内に転職した人がやること|前の会社の源泉徴収票を新しい会社へ
年末調整は、その年の最後に給料を支払う会社が行います。12月中に新しい会社から給料が出るなら、年末調整は新しい会社で行います。12月後半に入社して最初の給料が1月払いになる場合は、新しい会社で年末調整ができないことがあるので、人事に確認してください。
このとき、前の会社でもらった給料と天引きされた税金もまとめて精算するため、前の会社の「給与所得の源泉徴収票」が必要です。
転職した人の年末調整チェックリスト
□ 前の会社の源泉徴収票を受け取った(今年、複数の会社で働いた人は全社分)
□ 新しい会社に「扶養控除等(異動)申告書」を出した
□ 「基礎控除申告書」などの申告書を出した(2026年分は様式が変わっている)
□ 生命保険料・地震保険料の控除証明書を用意した
□ 退職後に自分で払った国民年金・国民健康保険の保険料も申告した(国民年金は控除証明書が必要)
最後の項目は見落とされがちです。退職から入社までの間に国民年金や国民健康保険を自分で払った場合、その保険料は社会保険料控除(払った保険料の分だけ税金を軽くできる仕組み)として年末調整で申告できます。領収書や、日本年金機構から届く控除証明書を捨てずに取っておきましょう。
源泉徴収票が間に合わない・出したくない場合
国税庁のタックスアンサー「No.2674 中途就職者の年末調整」では、前の会社の給与や税額を源泉徴収票で確認できない場合、新しい会社は年末調整を行うことができず、本人が確定申告で精算することになると案内されています。
源泉徴収票には前の会社の名前と給与額が載るため、「前職の年収を知られたくない」と提出をためらう人もいます。本人が提出しなかった場合の罰則は国税庁の案内には見当たりませんが、その場合は新しい会社で前職分を含めた精算ができないため、翌年に自分で確定申告をする必要があります。手間を考えると、提出してしまうほうが楽なことがほとんどです。
無職のまま年を越す人(年内に再就職しない人)は確定申告|税金が戻ることが多い
退職して年内に働かない場合は、年末調整を受ける場がありません。翌年に自分で確定申告をして精算します。途中退職の人は税金を多めに払っていることが多いため、多くの場合は払いすぎた税金が戻る「還付申告」になります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| いつ出せる? | 還付申告は、その年の翌年1月1日から5年間提出できる(国税庁 No.2030)。2026年分なら2027年1月から |
| 必要なもの | 源泉徴収票、国民年金・国民健康保険の保険料の領収書や控除証明書、生命保険料などの控除証明書、マイナンバーがわかるもの、還付金を受け取る口座 |
| 出し方 | e-Tax(マイナンバーカードを使えばスマホからも提出できる)、または税務署へ提出・郵送 |
| 失業保険は? | 雇用保険の失業給付は雇用保険法の規定により非課税のため、収入として書く必要はない |
| 退職金は? | 「退職所得の受給に関する申告書」を会社に出していれば、原則として申告は不要 |
確定申告の期間は原則として2月16日〜3月15日(土日祝日の場合は翌平日)ですが、還付申告だけなら1月から出せます。混み合う時期を避けて早めに出すと、還付金も早く受け取れます。
年明けから転職活動を始める人も、確定申告は別に必要です。求人の探し方を決めていない人は、転職エージェントの比較記事で、求人数や面談方法の違いを先に確認しておくと動き出しが早くなります。
退職金の税金の仕組みは退職金の税金の記事、失業保険の流れは失業保険の手続きガイドで詳しく解説しています。
源泉徴収票がもらえない時の対処法
会社は、退職した人に源泉徴収票を交付しなければなりません(所得税法226条)。国税庁の案内では、退職した場合の交付期限は退職後1か月以内とされています。届かない時は、次の順番で動きましょう。
メールなど記録に残る形で催促する
「お世話になっております。◯月◯日付で退職した◯◯です。年末調整(確定申告)に必要なため、源泉徴収票の発行をお願いできますでしょうか。郵送先は〇〇です。」
Web明細で交付済みと言われたら確認する
電子で交付されている場合もあります。辞めた後に見られない場合は、書面での交付をお願いしましょう。
それでも出ない時は税務署へ「源泉徴収票不交付の届出書」
納税地(通常は自分の住所地)を所轄する税務署に提出します。給与明細の写しと、会社に交付を求めたことがわかる書類(催促メールの控えなど)を添えます。1で記録を残しておくのはこのためです。
退職代行を使って辞めた場合も、源泉徴収票の受け取り方は同じです。代行を使った後の手続き全体は退職代行後の税金手続きの記事にまとめています。
2026年は改正あり|11月までに辞めた人は確定申告で反映される
2026年(令和8年)の税制改正で、基礎控除の引き上げ、給与所得控除の最低保障額の引き上げ、扶養親族の所得要件の見直しなどが行われました。国税庁によると、これらは2026年12月に行う年末調整から反映され、申告書の様式も前年から変わっています(出典:国税庁「令和8年度税制改正による基礎控除の引上げ等について」)。
一方で、2026年11月までの毎月の天引きは改正前のままです。そのため11月までに辞めて年末調整を受けない人は、改正後の基礎控除などを確定申告でしか反映できません。無職のまま年を越す人が還付申告をしておきたい理由のひとつです。
また、家族を扶養に入れられるかどうかの基準も変わるため、去年の書き方をそのまま写すと誤ることがあります。新しい会社から配られる案内や、国税庁の「年末調整がよくわかるページ」で確認してから記入しましょう。
これから年内に辞める人へ|退職のタイミングと年末調整
まだ退職していない人は、辞める時期によって手間が変わります。
- 1月に入社が決まっている:12月31日まで在籍して有給を消化すれば、今の会社で年末調整を受けられる。有給消化中の入社については有給消化中に入社できるかの記事を参考に
- 12月に辞める:12月に支払われる給料を受け取った後の退職なら、辞めた会社で年末調整をしてもらえる場合がある。人事に確認する
- 冬のボーナスをもらってから辞めたい:支給日の在籍条件を確かめる。詳しくはボーナスをもらってから退職する方法で
在職中に次の職場を決めて年内に入社できれば、税金の精算を新しい会社に任せられるうえ、空白期間の国民年金・国民健康保険の手続きもいりません。これから転職先を探す人は、求人数や面談方法を比べたうえで1〜2社に絞って相談すると効率的です。
退職後にやる手続きを時系列で確認したい人は退職後の手続き・やることリスト、住民税は年末調整とは別の仕組みなので退職後の住民税の記事もあわせて確認してください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 退職した会社で年末調整してもらえますか?
原則としてしてもらえません。12月に支払われる給料を受け取った後に退職した場合や、パートなどで年内の給与総額が一定額以下で年内に再就職しない場合など、国税庁が定める一部のケースに限られます。
Q2. 年末調整も確定申告もしないとどうなりますか?
払いすぎた税金がある場合は、その分が戻らないままになります。還付申告は翌年1月1日から5年間出せるので、出し忘れた場合も期限内なら申告できます。逆に税金が不足している場合は確定申告で納める必要があり、こちらは原則3月15日が期限です。
Q3. 失業保険をもらっていた期間は申告が必要ですか?
雇用保険の失業給付には税金がかからないため、所得として申告する必要はありません。確定申告では、会社からもらった給料の源泉徴収票をもとに計算します。
Q4. 前の会社の源泉徴収票を転職先に出さないとどうなりますか?
新しい会社では、前職分を含めた年末調整ができません。その場合は、翌年に自分で確定申告をして1年分の税金を精算します。
Q5. 12月に退職した場合はどうなりますか?
12月に支払われる給料を受け取った後の退職であれば、辞めた会社で年末調整をしてもらえる場合があります。そうでなければ、年明けに新しい会社に入る場合でも年内の精算はされないため、自分で確定申告をします。辞める前に人事へ確認しておくと安心です。
まとめ|退職者の年末調整は「年末の居場所」で決まる
- 年内に転職した人は、新しい会社で年末調整。前の会社の源泉徴収票を提出する
- 年内に再就職しない人は、翌年に確定申告。払いすぎた税金が戻ることが多い(還付申告は翌年1月から5年間)
- 12月31日まで在籍していれば、有給消化中でも今の会社で年末調整される
- 源泉徴収票は退職後1か月以内に交付されるもの。出ない時は記録を残して催促し、税務署に不交付の届出
- 2026年は基礎控除などの改正があり、12月の年末調整から反映される。11月までに辞めて年末調整を受けない人は、確定申告で反映させる
退職した年の税金は、少しの手間で戻ってくることが多いお金です。源泉徴収票と保険料の領収書を手元にそろえて、自分がどのケースにあたるかを確かめておきましょう。
※国税庁タックスアンサー No.2665・No.2674・No.2030、「源泉徴収票不交付の届出手続」、令和8年度税制改正(基礎控除の引上げ等)の案内にもとづきます(2026年10月時点)。個別の税額や扶養の判定は、勤務先や税務署にご確認ください。

